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からだの健康

ふだんは言わない小麦粉を食べないワケ


グルテンフリーの絶大な効果を身をもって感じながら、人にすすめることは実はそれほど多くありません。なぜなら「小麦粉をぬくなんて無理!私にはできない!」という反応がほとんどだから。

そりゃあ、そうよね。

パンや、パスタ、ラーメンといえば、毎日の食生活の主役級メンバー。グルテンフリーがいいのかもと思っても、おいしいあれやこれやを我慢してまで試そうという気にはなかなかならないのもわかります。

でも、もともとはうどん愛のつよかった夫と、パンなしには生きられなかった私が、いまずっと無理なくグルテンフリーをつづけています。そして、疲労や日中のだるさ、皮膚のかゆみなど、なんらかの不調を抱える人なら「一度はグルテンフリーを検討した方がいい」そう思うのです。

今回は、気になった方のために、その理由をわかりやすく説明していきたいと思います。

グルテンがひきおこす様々な症状

グルテンは小麦に含まれる粘性のあるたんぱく質です。近年さまざまな健康問題との関連がわかってきました。

毎日何十年も食べているパンやパスタが、実はあなたのこんな症状のもとだったとしたら。ちょっとふりかえってみて、思いあたることはありませんか?

・集中力の低下
・頭痛
・だるい
・抑うつぎみ
・下痢・便秘
・アレルギー体質
・皮膚トラブル
・関節の痛み

まるでインチキ占い師のように数撃ちゃ当たるとばかりに症状をならべたみたいですが、こんないっけんなんの関連もなさそうな症状が、裏ではすべてつながっています。

ポイントは、腸。小麦製品を食べたとき、お腹のなかはどうなっているのでしょうか?

グルテンが腸を傷つけるしくみ

なぜグルテンアレルギーがない人にも、グルテンフリーをおすすめするか。それを知ってもらうために、まずは腸の表面がどうなっているのかみていきたいと思います。

腸はいってみれば、体の内と外をへだてる体の城壁です
人間は口から入れたものをなんでもかんでも、まるごと吸収しているわけではありません。腸が、体に役立つものはとりいれ、害のあるものは閉め出してくれているのです。

そんな腸の表面一面にしきつめられているのが、絨毛の上皮細胞。有害なものをとおさないように、細胞と細胞の間は、特別なたんぱく質が楔(くさび)のように細胞同士をぴったりとつないでいます。

この細胞と細胞の結合のしかたを、タイトジャンクション(密着結合)といいます。腸のほか、脳や、肺などのように「内」と「外」の境界をしっかり守らないといけない器官の細胞は、このようなタイトジャンクションで密着しています。

ここでやっと、グルテンの悪行について説明することができます。グルテンが腸のなかに入ると、腸の上皮細胞がグルテンに反応し、この大切なタイトジャンクションの結合がほどけてしまうのです。

ゆるくなった細胞と細胞の間のすきまに、本来は腸が閉め出しているはずの、未消化の大きなたんぱく質分子や、細菌、有害物質が入るようになってしまいます。これが先ほどの症状の原因をつくっているのです。

腸粘膜が傷つくため消化機能は落ち、下痢・便秘症状がでるようになります。血流にのり脳まで到達した有害物質は、脳内炎症をひきおこし、抑うつ症状や集中力の低下をもたらします。未消化たんぱく質に反応した免疫系は誤作動し、アレルギー症状や自己免疫性疾患をひきおこします。また、さまざまな毒素の解毒をになう肝臓にも負担がかかり疲れやすくなります。

[参照]

Gliadin, zonulin and gut permeability: Effects on celiac and non-celiac intestinal mucosa and intestinal cell lines – PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16635908/

Zonulin and its regulation of intestinal barrier function: the biological door to inflammation, autoimmunity, and cancer – PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21248165/

Zonulin, a regulator of epithelial and endothelial barrier functions, and its involvement in chronic inflammatory diseases – PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28123927/

と、ここまでがグルテンフリーをおすすめする理由。グルテンが腸の基本的な機能をこわしてしまうんですね。

もちろんグルテンへの反応のしかたには個人差があります。ほとんど反応しない人もいれば、添加物程度の量でも受けつけない人も。しかし、人口の半分はグルテンに大なり小なり反応していると考える医師や研究者もいます。

とくに、すでに脳内炎症をもつ脳損傷経験者、そして自己免疫性疾患をかかえる人は、グルテンフリーを試してみる価値がじゅうぶんにあるでしょう。

グルテンフリーを試してみよう

そうは言っても、まだまだハードルは高いままですよね。最後に、スムーズにグルテンフリー生活のスタートを切るためのポイントについていくつかふれたいと思います。

はじめは代替食品をうまくつかおう

生活習慣のなかにくみこまれているものをいきなりやめるのは、かなり意志力のある人でさえ難しいこと。実は小麦にはちょっとした中毒性もあるので、最初のうちはどうしても禁断症状のように食べたくなってしまいます。

はじめは小麦製品を代替食品におきかえながらスタートするのがいいでしょう。グルテンフリーをつづけているうちに小麦欲も消え、そんな代替品も必要なくなっていきます。

パンは、米粉パンをさがして冷凍しておきましょう。ラーメン、パスタもグルテンフリーの商品があります。

わたしも朝はパン派でしたが、パン→米粉パン → オートミールと移行していきました。オートミールは小麦の味に似ているので、パン派の人に合っているかもしれません。麺はフォーが使えます。鍋のしめのフォーもなかなかおいしいですよ。

食物繊維を意識して摂ろう

小麦製品は、わたしたちの食生活で摂っている食物繊維の大きな割合を占めています。だから、グルテンフリーになったとたん食物繊維の摂取量ががくんと減ってしまいます。代わりになる食物繊維源を用意して、腸が不調をおこさないように注意しましょう。

おすすめは、朝食にオートミールを食べること、そしてお米に大麦を混ぜること。オートミールや大麦も小麦とおなじ麦ですが、グルテンはほとんど含まれていません。(※グルテンアレルギーの人には不向き)

まずは2~4週間、完全なグルテン断ちをしてみましょう。心が軽くなったり、以前よりエネルギーに満ちていたり、肌がきれいになったり、よけいな脂肪が落ちたりと、さまざまないい変化が感じられるかもしれません。ちなみに、いま挙げた内容は、実際に私が経験した変化です。

そして、2~4週間つづけたあとに、もう一度小麦製品を口にしたとき、「私ずっとこんな症状のあるまま暮らしてきてたんだ」と、それまで気づいていなかったさまざまな不快な症状に驚くかもしれません。

「わるいことは言わない、1回グルテンフリーをやってみて」
これが、いつもは言わないけど、私が本当はみんなに教えてあげたいことです。