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脳の健康

太るほど、脳の働きはわるくなる [最新研究]


脳について海外情報にアンテナをひろげている人なら、知らない人はいないダニエル・G・エーメン医師。ご自身の運営するエーメンクリニックスで、軍人やラグビー選手を中心に、脳を負傷した多くの人を脳SPECT検査をつかって診断・治療しています。TEDでのインパクト抜群の講演をご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。

つい先日8月4日、エーメン氏のチームが思わずビクッとしてしまう研究を発表しました。その内容というのも…

太っていればいるほど、脳の機能がわるくなることがわかったよ」

というもの。

うん、知ってた。やっぱりね。
うすうす気づいていたことが証明されてしまったわけです。

太るのは、個人の自由、体型はその人の個性。たしかにそうかもしれません。
もちろん、太っていてもコンプレックスと感じてほしくはないし、どんな体型であっても自分の体を好きでいてほしいと思います。(さも自分がやせているかのような口調ですが)

でもね、その考え方の裏に、太る原因について思考停止になっている社会がある。これが不健全。本質から目をそむけています。

太るのは、好きなものを好きなだけ食べてしまう、目先のことしか考えない、そんな意志の弱さがひきおこした結果ではありません

本来の原因は、知らずしらずのうちにとりいれている生活習慣や、ストレス家庭や職場などの環境。それが次第に、代謝の変化、ホルモン分泌の変化、炎症などをよび、悪循環をおこしているのが肥満です。

健康な人が感じる食欲と、肥満している人が感じる食欲は、はたしておなじものでしょうか?そのひっぱく感も、食欲が起こるメカニズムもちがいます。また摂取した食事をどのようにエネルギーに変換するかも変わってきます。ただカロリーを減らせばいいというダイエットは、この視点がぬけていて根性だのみです。体重を減らす過程も苦しいし、減らしたあともリバウンドに悩まされます。

体のしくみを知れば、もっと効率的に、らくに、スッキリした体をつくっていくことができます。「なんで食欲が起きたのかな?」「いま体のなかでなにが起きているのかな?」と分析してみるのが第一歩。食べてしまう自分を責めるでもなく、「私はこれでいいんだ」と投げやりになるでもなく、分析して、ちょっとずつ対策して、悪循環を好循環にもっていけるようになったら、スッキリした体と脳は自然と近づいてきます。

なんだか熱くなり、話がだいぶそれました。
話はもどって、エーメン氏の研究についてもう少しだけくわしくご紹介します。

この研究は、17,721人分の35,442にのぼるSPECT検査結果を分析したものです。脳の画像診断といえば、CTやMRIがすぐにおもいうかびますが、CTやMRIが脳の形状をみるのにたいして、SPECTは脳の機能や代謝を画像としてみることができます。おもしろいですね。

[参照]

Patterns of Regional Cerebral Blood Flow as a Function of Obesity in Adults – IOS Press https://content.iospress.com/articles/journal-of-alzheimers-disease/jad200655

下の画像はその研究から拝借したもの。
左から、標準体型(BMI 23)、太りぎみ(BMI 29)、肥満(BMI 37)の人の脳SPECT画像がならんでいます。左にいくにつれて、上の列の脳にぼこぼこ穴のようなもの(活動低下している部分)があるのがわかりますね。

分析の結果、傾向としてあらわれたのが、BMIが高い人ほど、脳の血流が低下しているということ。これは、休んでいるときでも、集中しているときでも変わらずこの傾向があり、また、脳の一部に限定されるものではなく、すべての領域で同様の結果がみられたということです。

脳の血流と聞いても「ああ、そうなの?」と聞きながしてしまいそうですが、脳の血流改善は、さまざまな脳障害の症状を安定させるうえでも、重要な柱の一つ。脳血流の低下は、その後アルツハイマー病を発症することを予見する要素であるほか、ADHD、統合失調症、高次脳機能障害、依存症、自殺との関連もわかっています。のんきに「ああ、そうなの?」とも言っていられません。

と、なんだかおどすようなことを書きましたが、体がおもしろいのは、自分で変えていくことができるところ。日頃から、地道に、たのしみながらできることにとりくむことで、自分で脳と体を変えていくことができるって、なんだかわくわくしませんか?